宝塚歌劇花組公演「新源氏物語」。90分でわかるダイジェスト版源氏物語といっても過言ではないでしょう。あの長い長い源氏物語の、ほとんどすべてのエピソードが盛り込まれています。
源氏物語を知っていれば、「ああ、これはあのエピソードね」「あの段ね」と背景が分かり、更に感動が倍増すること間違いなし。
源氏物語を読んだことが無い、覚えてない!という場合は、観劇後に源氏物語を読みたくなること確実。原文はもちろん原作となった田辺聖子氏の「新源氏物語」、時間が無ければ大和和紀氏「あさきゆめみし」でサラッと予習・復習しておきたい作品です。
(出典:宝塚歌劇団公式HP)
原作に忠実だから
花組では過去『あさきゆめみし』という同じ源氏物語を原作とする作品を上演しています。
『新源氏物語』も再演ですが1981年、1986年上演とのこと。直近の『あさきゆめみし』の方をご記憶の方も多いことでしょう。だから「なぜ芹香さんが頭の中将じゃないの!?」とか、「藤壺女御は花乃さんだけど、紫の上は桜咲さんが演じているの?」「明石の上は?」「およろしくね!がない」なんて思ってしまいます。マグマ大使のような、と形容された「刻の霊はどこ?」と。(詳しく知りたい方は、ぜひDVDをご覧下さい。)
今回は、忠実に再現された源氏物語。『あさきゆめみし』が紫の上の心理に深く分け入り、女性として「愛」とは何かを、その無常観を観客に共感させたのとは違い、本作ではあくまで光源氏の心理がメイン。許されない恋、あきらめきれない情熱、代替の利かない想いの行方。そして因果応報。無常。アプローチがまるで違います。女性視点から見ると、浮気な男の自分勝手な言い訳にしか聞こえない光源氏の台詞の数々ですが、ひたすら一途に愛を追い求める源氏を、いつしか愛おしくなって行く不思議な物語。
(出典:Twitter)
とにかく美しい!平安絵巻ショー
(出典:宝塚歌劇団公式HP)
浮気男の言い訳が許せる・・それはひたすら光源氏がその名の通り、光り輝くように美しいから。
煌びやかな平安装束に身を包んだ明日海さんの気品と美貌。まずは幕開きの超豪華立体26段飾りのお雛様。幕開きのこの美しさは、必見です。
プロローグ、和物ショーのごとき雅な世界は日本文化の誇りとして、ぜひ海外のお客様に見て欲しいもの。
美しさと儚さと、虚しさと
光源氏(明日海)を筆頭に惟光(芹香)、頭の中将(瀬戸)、夕霧(鳳月)、柏木(柚香)らのきらきらしい公達、桐壺帝(汝鳥)、右大臣(天真)、左大臣(紫峰)の渋いおじさま方。源氏物語の醍醐味、絢爛たる美女たち・・理想の女性・藤壺女御(花乃)と紫の上(桜咲)、気位の高い正妻・葵上(花野)、妖艶な朧月夜尚侍(仙名)、暗い情念が狂おしい美貌の六条御息所(柚香)、意外に可愛い強敵・弘徽殿女御(京)、強烈な存在となる女三の宮(朝月)。彼の前に現れては去っていく女性たち。
ため息が出るほど美しい世界です。光源氏が見ている世界はこんなにも美しく、そして儚く、虚なものであると思わせてくれました。だから観客も彼を愛することが出来るのです。
(出典:Twitter)
宝塚らしいショー
(出典:宝塚歌劇団公式HP)
中村一徳先生といえば、宝塚らしいオーソドックスなショーというイメージがあります。翻る白いドレスの娘役と装飾の少ないスタンダードな黒燕尾。
今回は、「情熱の赤」が印象的でした。豪華で、上品で、定番要素が全部きっちりと盛り込まれており、見終わったあと「ああ、宝塚を見た~」と満足出来るショー。今回もその例に漏れず、宝塚らしいショーです。
見せ場がたくさんありすぎて
衣装の色彩も美しく、スターがたくさんでてきて、順番に見せ場があるのも嬉しいところ。
それぞれ得意分野を生かした見せ場が随所にちりばめられており、さすが!の貫禄のスターさんから、こんなに歌える人がいるのね!銀橋でしっかり見たのはじめて!という若手さんまで、随所に場面が用意されていました。
ショーのメロディアも、ラテンありジャズあり、途中の黄金郷ではえっ聖闘士星矢?もあり、かっこいいと面白いのギリギリを攻めてて宝塚らしくて最高でした
— このえり (@konoeri) 2015, 10月 3
また、だからこそ、メロディアの中村先生の、この子もいいんだよー!あの子もいいんだよー!が伝わるこのお決まりのショーも、散漫だけど宝塚ファンとして微笑ましいとも思う。
— みー (@onaka0969) 2015, 10月 4